「初恋」を買った話。

なんだかヤバそうなタイトルになってしまったんですけど。

宇多田ヒカルさんの新アルバム「初恋」を買った。ここ最近は音楽を買うときはもっぱらダウンロードだったので、CDを買うのなんて10年ぶりぐらいではないかと思う。ということで、宇多田ファンである当方が勝手に「初恋」を聞いた感想を述べてみるっていう、そういう自己満100%のお話。

歌詞の変化

宇多田といえば、アメリカ生まれの帰国子女であり、バイリンガル。なので、日本語と英語を巧みに織り交ぜた歌詞が印象的だった。

他の歌手の場合、英語はサビやタイトルのキーフレーズ的な要素で使うことが多い。でも、宇多田の場合、日本語と英語が一体化しているというか、単純に「この続きの歌詞は日本語じゃあ音がハマらないので英語にした」ぐらいの感じがある。例えば、First Loveなんかでは、

You will alwaysbe inside my heart
いつもあなただけの場所があるから
I hope that I have a place in your heart too

ってな感じで、英語と日本語の内容がそのまま連続して歌詞になっているというか。こういう巧みな部分が他の歌手にはなく、個人的に好きなポイントだった。

日本語詞へのこだわり

ただ、本人も色々なインタビューで言っているんだけど、前アルバムのFantomeあたりから、日本語詞へのこだわりがかなり強くなっている。もちろん、文学少女だけあって昔から英語だけじゃなくて日本語の詞にもはっと驚かされるような表現が散見されて素敵だったんだけど、そこにますます磨きがかかっているというか、耳につく言い回しの日本語をサビに使ってくることが多い、

例えば、今回のアルバムでいうと、

  • 「Play A Love Song」の「1人静かに内省す」とか、
  • 「あなた」の「燃え盛る業火の谷間が待ってようと」とか、
  • 「誓い」の「今日という日は嘘偽りのない 永遠の誓い日和だよ」

とか。あと、英語が含まれている歌詞でも、英語が占める割合はかなり減っている。

個人的には、これもこれで好きだけど、ちょっと残念ではある。ああいう自然な感じで英語を使う歌手っていうのが他にはいなかったから。もちろん、今作にも「Play A Love Song」とか「Forevermore」とか「Too Proud」といった楽曲はあるんだけど。

もちろん、日本語の歌詞が素晴らしいことには変わりはない。「残り香」なんて、歌詞を見るだけで切なくて泣けてくるレベル。

母の死と楽曲

彼女の母親は、藤圭子さん。藤圭子さんは病気のせいで精神的に難しいところがあり、最期は不幸な形で死を迎えてしまう。

宇多田自身、インタビューで「母親の性格のせいで、そうとう振り回された人生だった」という風に述べている。ただ、母親のことが嫌いなのかと言われるとそういわけではなくて、母親に対しては深い愛情を持っていたんだけど、それを伝える術がなく、そしてそのまま別れることになってしまったと。

その後に出たアルバムFantomeでは、母親への追悼や後悔なんかを主題にした楽曲が多かった。リスナーとしては、宇多田自身の深い後悔や懺悔を知るとともに、「ああ、これで彼女が救われればいいな」と勝手に思っていた。

「初恋」

で、今回のアルバム。前半は色々なタイアップ楽曲が多く、キャッチーなものが揃っている。ただ、後半に行くにつれて、ミディアムテンポやバラードの楽曲が増え、歌詞も別れを想定させるものばかり。

さらに、色々なインタビューを見ていると、彼女の中で「初恋とは両親に対する感情のこと」、「人は両親の影響で構成されていて、他人と出会うのは自分のルーツを理解するため」といった趣旨のことを述べている。

ということを踏まえると、まだ彼女の中で母親の死というのは昇華しきれていなくて、これからずっと残り続けるのだろうなと。確かに、自分の両親がなくなったらと想像すると同じ気持ちになるし、彼女のように複雑な家庭環境で後悔が残り続けるのならなおさら。

とはいえ、2作連続でこういう楽曲が多いと、聞いてる側としても少し重い気持ちになってくる。もしかしたら、これから一生こういう楽曲を聞かされるのだろうかという不安も残る。

いや、彼女が単純に「恋人との別れ」と主題にしていたとしても、そういう背景を踏まえて我々が勝手に曲解しているだけなのかもしれないけど。でも、歌詞の中に「母の遺影」とか明らかに言われてしまうとなあ…っていう感じ。

雑感

という感じで、重い部分もあるアルバムではありますけど、相変わらず楽曲は素晴らしいのでおススメです。個人的には「誓い」「Forevermore」「残り香」がお気に入りです。

ただ、Fantomeをまだ聞いていない人がいらっしゃるなら、先にそちらを聞くことをおススメします。

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